NPO法人を設立するためには書類の作成、整備が必要です。書類の量、手続きの手順は面倒ですが、順序だてて進めないと設立する事はできません。
その中でも定款は法人運営で重要な書類(法人のルール作り)となります。
どのような内容、ルールが必要なのかを確認しましょう!

NPO法人は、定款で定めた目的の範囲内で権利を有し義務を負います。

定款は、当該法人の目的、組織、業務執行等に関する基本規則(ルール)を記載したもので、法人内部の規範として役員、社員、機関(総会、理事会)および法人の構成員全員を拘束します。

設立後の運営に合わせた定款を作成るか否かで、その後の活動展開に大きな支障が生じてしまう可能性もあるので、注意が必要です。

設立認証申請時には、所轄庁から大変厳しいチェックが入るので、設立手続きでは、この定款の作成が最大の山場といえます。

定款の変更はいつでも可能ですが、再度、所轄庁からの認証を受けなければならないので、定款変更手続きには新規設立時と同様、多くの時間と労力がかかってしまいます。

定款作成するときの3つのルール!

定款には下記の3つのルールがあります。自由に記載する、記載しない内容を決めていい訳ではありません。

  1. 絶対的記載事項… 必ず記載しなければならない事項
  2. 相対的記載事項… 定款へ記載しなくてもいいが、記載しなかった場合効力が生じない事項
  3. 任意的記載事項… 記載するか否かは自由。記載がなくても定款の効力には関係がない。

※上記2の相対的記載事項の中で効力を生じたい場合は必ず記載しましょう

NPO法人 定款 「絶対的」記載事項

目的

受益対象者の範囲、主な事業、法人の事業活動によって社会にどのような利益になるか、法人の最終目標等を明らかにします。

専門用語や一般的でない表現等は平易な表現に置き換えたり、専門用語の後にカッコ()書きで解説を加えるなどして誰にでもわかるように記載します。

名称

国や地方団体の機関等と誤認するおそれのある名称、特定の個人や企業等団体の名称を用いることはできません。また、学校法人や社会福祉法人のように、他の法律で使用が禁止されている名称もあります。

尚、登記上、名称に使用できない文字や記号もあるので注意して下さい。アルファベットを使用する場合は、登記名も併記します。略称がある場合は、それも記載します。

【記載例】

英文名を〇〇〇〇といい、略称を■■■会とする

その法人が行う特定非営利活動の種類および当該特定非営利活動に係る事業の種類

NPO法2条1項の別表に定められた20分野のいずれかを記載します。(下記の1~20の内どれか)

複数の分野の活動を行う場合には、そのすべてを記載します。将来的に活動する予定のものについても、記載した方が良いです。

    1. 保険、医療または福祉の増進を図る活動
    2. 社会教育の推進を図る活動
    3. まちづくりの推進を図る活動
    4. 観光の復興を図る活動
    5. 農山漁村または中山間地域の復興を図る活動
    6. 学術、文化、芸術またはスポーツの振興を図る活動
    7. 環境の保全を図る活動
    8. 災害救援活動
    9. 地域安全活動
    10. 人権の擁護または平和の推進を図る活動
    11. 国際協力の活動
    12. 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
    13. 子どもの保全育成を図る活動
    14. 情報化社会の発展を図る活動
    15. 化学技術の振興を図る活動
    16. 経済活動の活性化を図る活動
    17. 職業能力の開発または雇用機会の拡充を支援する活動
    18. 消費者の保護を図る活動
    19. 前各号に掲げる活動を行う団体の運営または活動に関する連絡、助言または援助の活動
    20. 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県または指定都市が条例で定める活動

主たる事務所およびその他の事務所の所在地

活動の中止とするところを「主たる事務所」として、それ以上の事務所をその他の事務所として、そのすべてを記載します(他の都道府県または海外に従たる事務所がある場合も含まれます)尚、その他の事務所がある場合は、定款には以下のように記載します。

2 この法人は、その他の事務所を〇〇県●●市××町▼番▽号におく

会員(社員)に関る事項

会員の種別(正会員、賛助会員等)については、何種類あってもOKです。どんな種類や名称であっても、社員となることは可能です。但し、法律上の社員にあたる会員については、入会に制限を付けることは原則としてできません。また、以下の事項についても予め決めておきます。

✔入会金および会費

✔会員の資格の喪失
…どのようなときに社員(会員)の資格が失われるか、あらかじめ定めておかなければいけません。

✔退会
…入会だけでなく、退会も自由にできるようにしなければなりません。

✔除名
…どのようなときに除名されるのか、どのような手続きで除名が行われるのかを予め定めておかなければいけません。

Point! 社員と会員の違い

社員とはNPO 法人が雇用する職員(会社でいう社員=従業員)という意味ではなく、NPO法人の構成員で、具体的には総会に出席してNPO法人の運営に参加する会員を指します。

また、一般的には「正会員」と呼ばれることが多いです。株式会社で例えると、「株主」のような存在で、NPO法人ではこの社員が10人いなければ設立できません。

この10人という人数の意味は、活動の趣旨に賛同して一緒に活動しようとする者が10人も集まらないような活動は、公益的な活動とは言えないと考えられているためです。

社員は、法人の目的に賛同して入会した「個人」や「団体」であり、NPO法人の申請認証時に定めた設立趣旨、活動内容に賛同・共鳴した者で、定款で入会金や会費の定めがある場合は、その負担を承諾してくださる「個人」や「団体」が社員(正会員)となります。

尚、社員(正会員)はそのNPO法人で働いている、いないは関係ありません。正会員に与えられた権利として、総会で議決権を行使することができます。

「正会員」の他に「賛助会員」や「名誉会員」「準会員」「協力会員」などの会員を作ることもでき、名称は自由です。これらの会員は総会での議決権を持っていないことが多く、議決権を持っていない会員は、総会での決議に参加することはできません。

役員に関する事項

役員に関する事項も定款に記載しなければいけません。役員就任ルールについてはこちら(NPO設立条件)をご覧ください。

役員とは、理事と監事のことです。理事は3人以上、監事は1人以上必要となります。

役員の人数も定めますが不足の事態で1人でも欠けたときには、定款に違反することになってしまうので、人数に幅をもたせることもできます。

役員の選任方法、職務、任期(任期は2年以内であれば、1年でも1年半でもOK。また任期を終えてから再任されれば、何期でも続けることができます。)解任、欠員が出た時の補充方法、報酬(役員報酬をもらえる役員数は、総役員の3分の1を超えてはいけない)についても、定款に記載します。

代表者(理事長等)を選任しない場合は、理事全員が代表権をもつことになります。なお従来は、定款で代表権をもつ者を1人と定めていても、善意の第三者には対抗できませんでしたが、定款で理事の内1人を代表者として定めた場合は、その旨の登記が可能となりました。

【例】

定款で理事を3人以上と定めた場合、就任理事を3人とするのではなく、4人として1名が退任した場合でも残り3人となるため、定款に違反することにはならない。

尚、理事及び監事が6人以上の場合に限り配偶者もしくは、三親等以内の親族を1人、役員に加えることができます。

総会および理事会

総会とは、NPO法人にとって最高の意思決定機関です。

法人の決めるべき主要事項を、「総会」と「理事会」に振り分け、それぞれの議決事項を定款に記載します。
主要事項とは下記のようなものです。

  • 事業計画、収支予算の決定
  • 事業計画、収支予算の変更
  • 事業報告、収支決算の証人
  • 役員の選任、解任
  • 役員の職務、報酬
  • 会員の種類、入会金、会費の額
  • 借入金の決定
  • 事務局の組織運営
  • 職員の職務、報酬
  • 定款の変更(総会決議)
  • 解散(総会決議)
  • 合併(総会決議)

※定款の変更、解散、合併については、必ず総会で議決しなければいけません。

Point! 総会と理事会の考え方…

総 会… 法人自体の『全体の重要事項』を決定する場合
理事会… 法人の『運営面で重要事項』を決定する場合

「総会」で決議すか、「理事会」で決議するか、どちらの会で主導するかは「タイプ」でわける方法があります。

▶『総会』主導タイプ

社員(会員)が中心に法人運営に積極的に関与する、関与できるタイプ。社員(会員)が総会の議決事項の多くに権限を持たせます。比較的人数が限られた意欲的な会員で、総会を開きやすい法人に向いています。

▶『理事会』主導タイプ

総会の構成員(社員、会員)が多く、年に何度も総会が開けない場合、法人運営の実務は理事会が担うことになります。これが理事会主導タイプで、運営を停滞させないためにも、理事会の議決事項を多く、総会の議決事項を少なくしておくことがポイントです。

定款の変更、解散、合併の3点は、必ず総会で決めなければならない事項ですが、その他の決議事項は総会または理事会に移すことが可能です。あらかじめ総会主導タイプか理事会主導タイプで運営するのかをを検討しましょう。

会議(総会、理事会)に関する事項

定款には通常総会や臨時総会についても記載します。通常総会は、少なくとも年に1回以上、開催しなければならず、開催する内容を定款に明記し、また総会する際の下記の内容を記載します。

    • 臨時総会の開催条件
    • 総会の議長
    • 総会開催となる定足数
    • 総会議決権
    • 総会参加への委任方法
    • 総会議事録作成義務

※理事会についての同内容を記載します。

 

資産に関する事項

資産構成やその管理について、定款に記載しなければいけません

会計に関する事項

会計処理の原則や、事業計画、予算、事業報告、決算について定款に定めます。

事業年度に関する事項

定款には「この法人の事業年度は毎年〇月〇日に始まり〇月〇日に終わる」というように、事業年度を具体的に定めます。

解散に関する事項

NPO法人の解散事由について、定款に記載しておきます。また、残余財産の扱いについても記載が必要です。なお、残余財産を譲渡できる相手は誰でもいいわけではありません。NPO法で下記の者に規定(限られる)されています。

    • 他の特定非営利活動法人
    • 地方公共団体
    • 公益社団法人
    • 公益財団法人
    • 学校法人
    • 社会福祉法人
    • 更生保護法人

残余財産の帰属先を定めない場合、または帰属先が明確でない場合は、国または地方公共団体に譲渡されるか、国庫に帰属されることになります。

定款変更に関する事項

所轄庁の認証を必要とする定款の変更についても、定款に定めておきます。

公告の方法に関する事項

「公告」とは、第三者の権利を保護するため、第三者の権利を侵害するおそれのある事項について、広く一般の人に知らせることをいいますが、この公告の方法について、定款に記載します。

なお、以下の場合については、官報に記載することが必須です。

    • 解散した場合に清算人が債権者に対して行う公告
    • 清算人が清算法人について破産手続き開始の申し立てを行った旨の公告

その他の事業を行う場合には、その種類のその他当該その他の事業に関する事項

主たる目的でない営利事業を行う場合は、事業の種類やその事業に関する事項を定款に記載します。

その他の4つの絶対的記載事項

他に、下記の4つの事項が定款の絶対的記載事項です。

【役員の任期】
【定款の変更】
【総会の招集方法】
【設立当初の役員】

NPO法人 定款 「相対的」記載事項

相対的記載事項は絶対的記載事項と異なり、必ず定款に記載しなければいけないものではありません。
しかし、定款に記載しなければ効力を持たないとされている事項です。即ち、後々トラブルが生じぬよう予め記載することで効力が生じる項目でもあります。

    • 理事の代表権の制限
    • 法人の業務を理事の過半数による議決ではなく、異なる定めによることとする場合
    • 定款で役員を社員総会で選任するとしている場合において、後任の役員が選任されていないときに限り、定款で定められた任期の末日後、最初の社員総会が終結するまで、その任期を伸長することの定めをおく場合
    • 定款変更に関する議決要件を変更する場合
    • 社員による臨時総会の開催請求に必要な社員数
    • 理事等に委任される法人の事務
    • 総会の決議事項の事前通知原則の例外規定をおく場合
    • 各社員の表決議権平等について異なる定めをおく場合
    • 総会に出席しない社員の書面採決、代理人出席権限について異なる定めをおく場合
    • NPO法で定めた以外の解散事由の定めをおく場合
    • 解散時の残余財産の帰属先
    • 合併に関する決議要件を変更する場合
    • 解散に関する決議要件を変更する場合

NPO法人 定款 「任意的」記載事項

任意的記載事項とは、定款内に記載せずとも他で規定できる事項です。 定款を作成する時点で決まってなくてもよい事項ともいえます。

    • 社員以外の会員に関する規定
    • 役員の種類、職務、報酬、選任
    • 会議の種別、構成、議長、定足数、議決、議事録等
    • 財産の構成、財産の管理、事業計画、予算、会計年度等
    • 残余財産の処分
    • 事務局の設置、備え付け帳簿及び書類について

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