ポイント!

社会福祉・障害福祉施設運営するのは、「法人」でなければいけません。こちらのページでは福祉業を運営する際に多く選択される「NPO法人」についてまとめてみました。

NPO法人とは

NPO法人とは『Nonprofit Organization』の略称で、『さまざまな社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し収益を分配することを目的としない団体』です。

収益を目的とする事業を行うこと自体は認められていますが、事業で得た利益は、さまざま社会貢献活動に充てることになります。

良くわからない…と思われるので、一般に有名な『株式会社』と比較すると…

NPO法人株式会社
目的社会貢献活動
利益を目的としない(非営利)
収益を確保
利益を目的とする(営利)
団体構成員への配分分配 NG分配 OK

NPO法人の特徴と役割

1.NPO法人の特徴

NPO法人は「民間」が行う「非営利」で「公益」を目的とする法人です。

ボランティアなどは任意団体(有志で集まった団体)でもできますが、法人格を取ることで、社会的な認知を得るにも有効です。

法人格を取れば、不動産や銀行口座を法人名義とすることができます。

NPO法人の目的『社会貢献活動』は主に、福祉、教育、文化、まちづくり、環境、国際協力等があり予め法律で定められています。

ここで注意が必要なのが「収益を目的としない」という部分ですが、これはあくまでも事業を通じて得た利益は、構成員に分配することはできない…という事であって、『利益(余ったお金)』は法人の活動費、運営費として(社会貢献に関する経費として)利用する事はできます。

Point! 株式会社との比較

株式会社
・・・利益の分配OK(株主に持ち分に応じて利益を配分する事ができる)

NPO法人
・・・利益の分配×。但し、法人の活動費、運営費として利用する事はOK

2.NPOの役割

現在の日本社会では高齢者問題や地方の過疎化、少子化問題等たくさんの課題があります。これらを解決するには、行政、企業、市民が協力しながら活動していかなければなりません。

しかし、行政の財政も厳しく、収益性の低い事業に対し、企業(特に株式会社)積極的に関与する事は難しいのも現状です。

このような状況の中で、近年注目されているのが「社会企業」と言われる事業モデルです。社会に貢献することをビジネス(仕事、経営)手法とする点では株式会社と同じですが…

・ビジネスの手法で社会課題を解決する
・ビジネスとして社会貢献する

これら志と事業の両立を実現する事で現在注目を浴びております。

今までの日本では社会の課題というのは、行政や企業がサービスとして対応してきました。

しかし、行政が中心となると、課題解決に時間がかかったり、柔軟な対応できない、また企業だとどうしても利益追求してしまい、サービスの質が低下や金銭的に余裕が無い利用者が利用できない等、利用者にしわよせが及びます。

NPO法人はこのような社会問題の解決に対し、大きな役割が期待されております。

NPO法人 設立のメリット

NPO法人の主なメリットは下記の1~7があります。

  1. 社会的信用性の増加
  2. 法人名による契約や登記が可能
  3. 組織を永続的に維持できる。
  4. 経費の認められる範囲が広い
  5. 行政機関から事業委託や補助金を受け取りやすい
  6. 金融機関から融資が受けやすい
  7. 税金面で有利

上記1~6のメリットの詳細は下記をご参照下さい。

1.社会的信用性の増加

「社会貢献」を目的とした法人の場合、「社会貢献してますよ!」と言っても、対外的な信用がなく利用者がいなければ存在意義がありません。この時「法人格」に対する信用があれば、利用する人も多くなります。例えば…

  • 社会貢献している・・・ 株式会社、個人事業
  • 社会貢献している・・・ NPO法人

上記の場合、「NPO法人」だと既に「社会貢献、ボランティア」というイメージ、信用性が既に定着しており、第三者(利用者)も信頼されます。また利用者からの信頼だけではなく、取引先、提携先に対しても使用度が高いです。

また後述しますが、NPO法人は、定款や登記簿謄本などによって個人と法人の会計が明確に区分されており、所轄庁(NPO法人を監督する行政)へ毎年決算書の提出が求められており、また公に活動状況の情報を公表しなければならず、財政面、活動面ともに透明性が高いと言えます。

この他、社会的信用性が高い故に「安心して働ける法人」というイメージがあり、優秀な人材が集めやすく運営上大きな効果が生じます。

2.法人名による契約や登記が可能

任意の団体(個人事業、有志のグループ等)の場合、不動産名義が得られない、銀行口座が作れない等のでメリットがありますがNPO法人はこれらの問題が解消されます。

3.組織を永続的に維持できる

任意の団体(個人事業、有志のグループ等)の場合、不動産や銀行口座等も「個人」の方が管理、所有しており、仮にその人が死亡してしまうとその任意の団体の財産が、死亡した人の「相続財産」の対象となり、任意の団体に帰属しません。

しかし、NPO法人であれば代表者は理事長であっても、全て財産は「法人」へ帰属するため、代表者である理事長が死亡しても相続財産とはならず、法人に残ったままです。

4.経費の認められる範囲が広い

任意の団体(個人事業、有志のグループ等)の場合、税務申告する際、必要経費として認められない内容があります。なぜなら、経費自体が、任意団体の経費(事業)なのか、それとも個人の経費なのか区別する事が難しいからです。

しかしNPO法人の場合には、個人の支出とNPO法人の支出として経費が明確に区分されるため、事業として使用した経費であれば大半が経費として認められます。

5.行政機関から事業委託や補助金を受取りやすい

行政機関から事業委託や補助金を受取りやすいのは、NPO法人の最大のメリットとも言えます。中には事業性に応じて補助金の交付を「NPO団体」限定にしたものもあります。

6.金融機関からの融資も可能

任意の団体(個人事業、有志のグループ等)で融資を受ける場合、融資の規模が少額になりがちですが、NPO法人となると事業の内容にもよりますが、任意の団体では不可能は資金量を調達(融資)できる可能性が高くなります。

7.税金面で有利

任意の団体(個人事業、有志のグループ等)の場合、たとえ社会貢献活動をしたとしても、一般的な課税(税金)が課せられます。しかし、NPO法人の場合、収益活動をしない団体であれば税金の減免申請を毎年実施すれば税金はかからず、会費や寄付金を中心に事業を運営している場合、税金面え有利といえます。

NPO法人 設立のデメリット

NPO法人であっても良いことばかりではありません。デメリットもあります。主なデメリットは下記の1~4があげられます。

  1. 事務手続きが煩雑
  2. 設立時に最低10名以上の社員が必要
  3. 解散しても残余財産は戻ってこない。(自由に処分できない)
  4. 設立に時間がかかる。

上記1~4のデメリットの詳細は下記をご参照下さい。

 

1.事務手続きが煩雑

NPO法人の会計は株式会社等とは異なり、法律により定められた会計処理に従って計算する必要があります。その原則は…

(1)会計は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すこと
(2)財産目録、貸借対照表、活動計算書は会計のルールに基づいて収支、財産状態に関する真実な内容を明確に表示したものとすること
(3)採用する会計処理の基準、手続きは、毎事業年度継続して適用し、みだりに変更しないこと。

また、上記会計に関するルールの他、毎事業年度終了後(決算終了後)3ヵ月以内に、下記①~⑥の書類を作成し、所轄庁へ提出する義務があります。これらの書類は利害関係人からの請求があった場合、公開しなければいけません。

①事業活動報告書
②財産目録
③貸借対照表
④活動計算書
⑤役員名簿
⑥10人以上の社員の氏名、住所を記載した書面

さらに、NPO法人は次の事項にかかる定款の変更を行う場合、所轄庁の認証を受けなければいけません。

①目的
②名称
③特定非営利活動の種類、事業の種類
④主たる事務所、その他の事務所の所在地
⑤社員の資格の得喪に関する事項
⑥役員に関する事項等

2.設立時に最低10名以上の社員が必要

ここでいう社員とは会社員や従業員の事ではありません。株式会社でいえば「発起人」のような人で、株式会社であれば発起人は1名、一般社団法人でも2名から設立できますが、NPO法人の場合、最低10名が必要です。その点、NPO法人では人集めが大変といえます。

3.解散しても残余財産は戻ってこない。(自由に処分できない)

NPO法人が、その設立の目的を達成したり、運営が厳しくなり解散(法人の運営を終了)する場合、その時の残余財産は、合併および破産手続開始の決定による解散を除いて、所轄庁に対する清算結了の届け出のときにおいて、定款で定めるところにより、その帰属すべき者に規則します。

もし、定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定がないときは、清算人は、所轄庁の認証と得て、その財産を国または地方公共団体に譲渡することができますが、社員や理事の元に戻ることはできません。

4.設立に時間がかかる

NPO法人は、株式会社や一般法人と比べると、設立手続きに非常に多くの時間がかかります。

株式会社や一般社団法人の場合は、平均的に、必要な書類などが集まれば公証役場での認証から登記申請までおよそ1週間、その後登記が完了し、登記簿謄本や印鑑登録証明書が取得できるまでさらに1週間ほどでできますが、NPO法人の場合は、手続きがすべて終了するのに約半年かかってしまいます。

提出書類が多いことや認証申請から2か月間の縦覧期間がるので、事業をスムーズに開始する事はできないといえます。

なお、「縦覧」とは、NPO法人が適正に運用されるために、NPO法人に関する情報を誰でも見られるようにすることをいいます。

NPO法人について更に詳しい情報は下記「NPO法人」をクリック!