1.加算って何?

社会福祉施設でよく「〇〇加算」という言葉を耳にすると思いますが、何に加算されるかというと、保育園であれば児童1人あたりの『基本分単価(公定価格)』に加算されます。

ちなみに『加算』は保育園の種類毎により加算の種類、金額が異なり、加算数も異なります。

(1)保育園の種類毎の加算

令和2年10月現在の保育園種類毎の加算は下記の通りです。

①小規模保育園

処遇改善加算Ⅰ  
障害児保育加算  
休日保育加算  
夜間保育加算  
減価償却費加算  
賃借料加算  
連携施設を設定しない ※減算
管理者を配置していない ※減算
土曜日に閉所する ※減算
定員を恒常的に超過する ※減算

 

②認可保育園

処遇改善加算Ⅰ  
3歳児配置改善加算  
休日保育加算(+処遇改善Ⅰ)  
夜間保育加算(+処遇改善Ⅰ)  
減価償却費加算  
賃借料加算  
チーム保育加算  
副食費徴収免除加算  
施設長を配置していない ※減算
土曜日に閉所している ※減算
定員を恒常的に超過する ※減算

 

③認定こども園(保育所認定)

処遇改善加算Ⅰ  
3歳児配置加算  
休日保育加算  
夜間保育加算  
チーム保育加算  
減価償却加算  
賃借料加算  
外部監査加算  
副食費徴収免除加算  
1号認定こどもの利用定員を設定しない  
土曜日に閉所している  
子育て支援の取り組みを実施していない  
年齢別配置基準を下回る ※減算
配置基準上求められる職員資格を有しない ※減算
定員を恒常的に超過する ※減算

 

④認定こども園(教育標準時間認定)

処遇改善加算Ⅰ  
副園長・教頭配置加算(+処遇改善Ⅰ)  
学級編成調整加算(+処遇改善Ⅰ)  
3歳児配置改善加算(+処遇改善Ⅰ)  
満3歳児対応加配kさん(+処遇改善Ⅰ)  
講師配置加算  
チーム保育加配加算  
通園送迎加算  
給食実施加算(施設内調理)  
給食実施加算(外部搬入)  
外部監査費加算  
副食費徴収免除加算  
年齢別配置基準を下回る ※減算
配置基準上求められる職員資格を有しない ※減算
定員を恒常的に超過する ※減算

上記①~④の加算のほとんどは、条件付きです。

例えば、保育園における加算の場合…

✔賃借料加算
→ 条件保育園の土地、建物を賃借している事が条件

✔休日保育加算
→ 休日に保育園を開所している事が条件

(2)加算の仕組み

加算をイメージ図にすると下記のようになります。

【0歳児 基本分単価への加算】

上記のように、それぞれの加算条件をクリアする事によって、児童1人の基本分単価に加算され合計した金額がその施設の公定価格となります。

このようにいくつもある『加算』の中に『処遇改善加算Ⅰ』と『処遇改善加算Ⅱ』があるのです。

2.処遇改善加算について

国によると処遇改善等加算とは,教育・保育の提供に携わる人材の確保・及び資質の向上を図り,質の高い教育・保育を安定的に供給していくために,「長く働くことができる」職場を構築することを目的とした加算です。

…何だか相変わらず難しい言い回しですが、ザックリ言えば、施設(教育・保育に携わる)に働く職員の人達が質の高い仕事をしてもらうために、長く働ける職場環境を整えることを目的として、そのために今まで給付してきた委託費を更に増やす…ということです。

保育園に例えるならば、保育園職員の方々がより良い保育を提供できるよう、安定した職場環境を整えて長く勤務できるように、施設に対して支払う委託費を増やし給料を増やす…ということです。

(1)処遇改善加算Ⅰ

職員の平均経験年数の上昇に応じて昇給する賃金や賃金改善・キャリアアップの取り組みに要する費用として加算します。処遇改善加算Ⅰは更に下記の2つに区分されます。

①処遇改善加算Ⅰ 基礎分

基礎分は,職員の平均経験年数に応じて加算されます。『平均経験年数』なので、経験年数が高ければ高いほど加算額が高くなります。しかし、平均経験年数が低いと加算も低くなります。低くなるケースは若手の職員さんが多くなると必然と低くなる傾向にあります。職員の採用、退職の人数が多ければ平均経験年数も大きく変動する可能性があるので、要注意です。

では平均経験年数の対象となる『職員』とはどの職員が該当するかと言うと…

  • 保育施設等において,1日6時間以上かつ月20日以上勤務している者
  • 保育施設職員全員(保育従事の有無問わず『職員』であれば全員です)

※保育園だから『保育士』だけと思われがちですが、保育士さんだけではありません。施設で働く全従業員の方々が対象です。

次に『平均経験年数』は…

  • 現在の施設での勤務年数
  • 現在の施設以外(過去)での教育・保育等に携わってきた経験年数

※過去の経験年数は、過去に勤務した施設等から『従事証明書』を発行してもらい証明しなければいけません。

②処遇改善加算Ⅰ 賃金改善要件

『賃金改善要件』とは、加算額を職員の賃金改善だけに限定し、実際にどのように賃金を改善するのかを計画書を作成し提出しなければいけません。

Point!
加算で多く貰ったから、何か物を買うとか次年度に繰越しにするとかは厳禁!計画的に職員の方々に配分しなければなりません。一般的に職員の賞与や固定給を増やす方法で改善しているようです。

(2)処遇改善加算Ⅱ

職員の技能・経験を積んだ職員に係る追加的な賃金改善の費用として加算されます。

教育・保育の現場で技能・経験を積んだ保育士等に対し、一定の研修修了を要件として、下記の役職を発令することで、個々人のキャリアアップを図り,賃金に反映させることを目的とした加算です。

✔月額4万円の対象: 副主任保育士(中核リーダー)・専門リーダー
✔月額5千円の対象: 職務分野別リーダー(若手リーダー)

※必ずしも上記の役職名称でなければいけない訳ではありません。

①処遇改善等加算Ⅱにおける研修修了の要件について

本来、処遇改善等加算Ⅱが加算されるためには、研修終了要件(条件)により研修を受講しなければなりませんが、当該研修要件は令和2年現在、令和4年開始までは必要ないこととなっています。

※令和4年以降は、職員の研修の受講状況等を踏まえて、国において判断されるようです。

②処遇改善等加算Ⅱの支給額(一人月額)

  保育園 幼稚園 認定こども園
副主任保育士(中核リーダー) 48,860円 51,030円 49,950円
職務分野別リーダー(若手リーダー) 6,110円 6,380円 6,240円

③処遇改善等加算Ⅱを受けるための条件

処遇改善等加算Ⅱを受けるためには、下記の要件に該当しなければなりません。

  • 処遇改善等加算Ⅱに基づく支給分に関して,基本給の上乗せ又は役職手当及び職務手当など,職位・職責・職務内容等に応じて毎月支払われる基本給または手当により交付することとしている。
    ※一時金等により支払うことはできません。
  • 処遇改善等加算Ⅱの実施により,他の給与項目等の水準を低下させていない。
    ※【例】処遇改善等加算Ⅱで月4万円支給するが、固定給を5万円減額する。
  • 職員の職位・職責又は職務内容等に応じて、これに応じた賃金体系を定め,全ての職員に周知していること
  • 処遇改善の具体的内容について『賃金改善計画書』を作成し,職員に対して当該計画の内容について周知を行っていること
  • 家庭的保育事業以外の施設・事業所において,副主任保育士(中核リーダー)及び職務分野別リーダー(若手リーダー)等の発令や職務命令が行われていること

(3)処遇改善加算の支給確認方法

処遇改善等加算ⅠおよびⅡいずれも、職員の処遇改善(給与UP)が目的の加算のため、加算された分が賃金に反映しなければいけません。一定の人に多く支給したりまたは一定の人だけ少なくしたりしてはいけません。

【例】家族経営の家族には多く支給し、他の家族以外の従業員へは少なく支給する事はダメ。

ⅠおよびⅡも、誰に、いくら支給したのか、毎年、実績報告書提出時に支給した職員本人から『確認書(署名押印)』をもらい、行政機関へ提出することになります。

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