保育園では保育方針、運営方針が決まっており、その方針に基づいて保育園の運営をしているかと思います。

方針を決めるのは簡単ですが、大切なのが実行すること。また「保育園の特徴」「保育園の雰囲気」も方針同様、保育園運営する上で大切なことです。

では、これら理想とした「方針」「特徴」「雰囲気」を誰が率先、実現するかというと、保育園の園長です。

今回はこの保育園の「園長」についてまとめてみました。

1.園長となるための要件

保育園の種類は沢山あって、その種類毎に保育園の園長となる資格は違うのでは?と思われる方もいるかと思いますが、ほぼどの保育園でも一定の条件の基、誰でもなれます。

勘違いが多いのは「保育士資格」の有無。大半の「保育園」であれば保育士資格は不要です。

認可保育園 誰でもOK
認可保育園(小規模保育園)
企業主導型保育園
認定こども園(保育所型)
認定こども園(幼保連携型) 保育士・幼稚園教諭資格保有者に限る

2.公定価格と園長の関係について

保育園園長は誰でもOKですが、実は誰でもOK…と言えない場合もあります。

それは公定価格と施設長配置(園長)の関係です。

認可保育園、認可保育園(小規模)だと、行政から委託費という運営費(生活費みたいなもの)が給付されます。保育園に園長を配置し園長の給与を運営費(委託費)から支出する場合、下記の要件をクリアしなければいけません。

園長給与 委託費からの支出要件

(1)その管理者が児童福祉事業等に2年以上従事した者又はこれと同等以上の能力を有すると認められる場合
…認可外保育園以外の児童福祉事業(保育園)で2年以上の勤務経験あるまたはそれと同じ能力があるという意味です。

(2)常時実際にその事業所の運営管理の業務に専従し、かっ給付費からの給与支出がある
…施設長(園長)として常勤(1日6時間以上)で保育園の運営管理の業務に従事し、保育園の運営費から給与を支出している事

上記(1)と(2)の要件がクリアしていなければ、どうなるかと言うと、ザックリ言えば委託費が減る事になります委託費が減るという事は収入が減る意味ですね。どの位の収入が減るかはその地域、加算状況、定員状況によって異なりますが、結構大きい金額が減ります。下記の表をご覧ください。

園長職配置 減算前・減算後

【〇〇県 定員60名とした場合】

【例1】施設長配置要件 クリア

年齢 基本分単価
【A】
定員
【B】

( A × B )
0歳児 188,030円 6名 1,128,100円
1歳児・2歳児 118,100円 21名 2,480,100円
3歳児 61,160円 15名 917,400円
4歳児・5歳児 54,170円 30名 1,625,100円
    6,150,780円

【例2】施設長配置要件 該当しない

年齢 基本分単価
【A】
減算額
【B】
減算後基本分単価
【C】(A-B)
定員
【D】

( C × D )
0歳児 188,030円 80,030円



180,000円 6名 1,080,000円
1歳児・2歳児 118,100円 110,070円 21名 2,311,470円
3歳児 61,160円 53,130円 15名 769,950円
4歳児・5歳児 54,170円 46,160円 30名 1,384,200円
        計  5,545,620円

【例1】の合計 - 【例2】の合計 = 差額605,160円(年/7,261,920円)

上記のように、園長配置要件に該当する場合と該当しない場合、月60万の差額が生じ、減収となります。考え方によっては、園長職を配置せず(給与負担が減る)保育園運営も可能ですが、現実的ではありません。

また、適当に2つの要件に該当しても、常勤要件に該当しなかった場合、減算となります。
わかりやすく言うと本来、常勤(1日6時間以上)で、園長職として勤務しなければいけないのに、1日2時間しか勤務しなかったとか、園長職以外に保育士として保育に従事していたとか、調理業務に従事した等の場合、「園長の職務に従事していない」とみなされ、委託費が減算されます。

もう一度、種類別に保育園の園長職についてまとめると下記の通りです

認可保育園 誰でもOK ※施設長要件がクリアしていなければ委託費減算
認可保育園(小規模保育園)
企業主導型保育園 誰でもOK
認定こども園(保育所型)
認定こども園(幼保連携型) 保育士・幼稚園教諭資格保有者に限る

 

3.私立保育園の園長

「園長は誰でもOK」とは言いつつ実際の所、私立保育園の園長先生は大半が保育士資格を必須としています。

どちらかと言うと、保育経験が豊富な方を必須としています。経験豊富=保育士資格保有という訳ですね。
この考えは当然と言えば当然です。一般的に私立保育園の園長先生は、クラス担任→ 主任保育士→ 副園長等の経験を経てから園長職に就くからです。

勤務経験年数は法人(施設)によって色々。
社会福祉法人の保育園の場合、長期間の経験、プログラムを経て園長職に就く傾向があります。しかし、株式会社の保育園の場合、比較的短期間で園長職に就きます。その理由は多くの施設を開園し、既存園から抜擢して新規園へ移動するためです。

また法人格だけでなく、家族経営等によって園長職の傾向が異なります。家族経営の場合、どちらかと言うと、保育士資格が無い方が園長職に就く傾向があります。資格や経験より、同族(血縁)の有無で判断します。
例えば、夫婦の場合、資格の無い旦那さんが園長となり、保育士資格がある奥さんが主任に就き、実務上、主任である奥さんが保育業務をメインに従事し、旦那さんが経営全般(経理、行政機関窓口、施設内の衛生管理等)に従事するようです。

4.園長職に求められる資質

園長と言えば、保育園の顔となる存在。そして何よりも保育園で何か問題が生じれば全責任を負います。

園長先生=偉い、楽である、保育園にいない・・・なんて事も想像されるかと思います。実際、園長先生を保育園で目にする事が少ない・・・そんな声を聞くこともあります。

しかし、実際に経験した私の意見を言わせていただくと「偉い、楽である、保育園にいない」など言える状況ではありません。現実は下記の日々下記の仕事に追われています。

園長の仕事

  • 事務の仕事(給与計算・行政機関へ提出する申請書等)
  • 保育士さんが作成した書類の内容確認
  • 在籍園児について、保育士さんとの情報共有
  • 外部関係者の対応(業務委託先、消防署、警察署、ご近所)
  • 保護者対応
  • 職員会議対応等

上記はごく一部ですが、結構大変です。経営している法人の規模にもよりますね。
例えばいくつも保育園を運営している法人であれば、「本部」がありますので、事務手続きは軽減されその分、保育園の子どもと関わったり、保育士さんのフォロー(制作の手伝い等)をしたり、有給休暇の取得できたりできます。

そして何より重要なのが、保育士さんとのコミュニケーション。保育園にいる子どもを保育するのは保育士さん達であって、園長先生ではありません。園長先生が保育に従事しなければ園がまとまらない…このようなケースは、あまり良い保育園だとは言えません。

園長先生と保育士さんとの間がしっかりとコミュニケーション(信頼関係)があれば、保育士さんも伸び伸びを保育業務に集中することができますし、それが子どもにも良い影響となり、良い保育環境となるはずです。

園長先生と会社の社長も資質として求められるのは「組織(園)を統括できる資質」「リーダー的役割」だと思います。

だた実際のところ園長職を一言で言えば『保育園の何でも屋であり、最終責任者』というところでしょうか。

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